断熱リフォームで快適な住まい
夏の暑さが厳しい近年、高齢者などが家の中で熱中症になるニュースも聞かれます。逆に冬は、居室と浴室などの温度差によるヒートショックが血圧の急激な変動を招いて健康を害することも。とくに、築年数の古い家では断熱材が入っていないことも多く、「エアコンをつけてもなかなか涼しく(暖かく)ならない」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
そこで注目したいのが「断熱リフォーム」です。住まいの断熱性能を上げると外気温の影響を受けにくくなるだけでなく冷暖房効率も格段にアップ。真夏でも真冬でも少しのエネルギーで快適な室温を保てるようになり、熱中症やヒートショックの防止につながるなど健康面への好影響も報告されています。
今回は、本当に快適で健やかに暮らせる住まいを実現する断熱リフォームについて、その効果やプランを紹介していきます。
断熱性能の進化
寒冷地以外でも住宅に断熱性能が求められるようになったのは、省エネ基準が制定されはじめた1980年頃。その後、旧住宅金融公庫(現住宅金融支援機構)の融資条件に住宅の断熱が加わるなど、徐々に普及が進んできました。日本の「断熱」の歴史は30年程度ということになりますが、その間、省エネ基準が改正されるたびに断熱の仕様や性能は向上してきましたから、やはり築30年の住宅と現代の住宅では断熱性能に大きな差があるのです。
断熱リフォームで体感温度が変わる
エアコンをフル稼働しているのに暑い、または寒いと感じてしまう。そうした体感温度に影響しているのが、住空間を取り囲む床、壁、天井、窓などの表面温度です。先のデータでもわかるように、断熱性能の低い築30年の住宅と最近の新築住宅では、この表面温度に差があります。エアコンで同じ室温に設定しても、築30年の家は夏に表面温度が高くなるためより暑く、冬は低くなるためより寒く感じてしまうのです。
体感温度が変わる断熱リフォーム
断熱リフォームの目的は心地よい室内環境=体感温度をつくり出すこと。適切な断熱工事を行えば建物の表面温度は外気温に左右されにくくなり、新築住宅と同じく快適な室温を保つことができます。
断熱リフォームプラン
断熱リフォームというと大掛かりな工事をイメージするかもしれませんが、住まいをまるごと断熱する方法から、天井や床、窓などの部分断熱まで施工プランはさまざま。状況や予算にあわせて選ぶことができます。
「まるごと断熱」は、床、壁、天井、窓といった室内を取り囲むすべての面で断熱性能を高める工事。室内側に断熱材を付け足す方法では内装をはがすため、間取りの変更や耐震リフォームを同時に行うと合理的です。また、既存外壁を断熱材の入った新しい外壁で包むように覆う外張り断熱は、外観が新しくなる利点もあります。一方で、建物の重量が増すため、既存外壁の劣化状況や建物の耐震性をきちんとチェックして適切な補修を行う必要があります。
まるごと断熱が難しい場合には、「天井・床の断熱リフォーム」を行うだけでも、夏の2階の暑さや冬の床の冷たさを軽減できます。小屋裏と床下から工事を行うので、住みながらリフォームできるのもメリットです。
既存窓の内側に断熱窓を新設する「内窓リフォーム」は、1日で工事が終わる比較的簡易な方法です。窓の結露が防止できるほか、サッシの交換をできないマンションなどでも手軽に窓の断熱性能を高められます。
住まいをまるごと断熱すると高コストで工期も長くなりますが、その分、断熱性能は確実にアップします。簡易なリフォームは工期が短くコストも抑えられる代わりに効果も限定的に。そのため、2階の暑さや1階北側居室の寒さと結露を解消するなど、場所を絞って集中的にリフォームするほうが効果を得やすいでしょう。
断熱リフォームで毎日の暮らしが変わる
適切に工事を行えば効果を体感できるのが断熱リフォーム。室温のムラがなくなり冷暖房の効きも良くなるため、エアコンをつけるのを我慢しなくてもこれまでより冷暖房費を節約できます。加えて、一年を通して薄着で過ごすことができ、先のデータでもわかるようにヒートショックのリスクも低減されます。
断熱効果を確実に得るためには、施工実績のあるリフォーム会社を選ぶことも大切です。隙間なく断熱材を施工するのはもちろん、外断熱なら既存外壁との間に通気層を設けるなど、基本的な断熱工事のノウハウは必須。防湿処理などが不十分だと壁の中で結露が生じるなど、表には出にくいトラブルが後になって発覚することもあります。