床暖房の特徴から種類を選ぶ!
まず温水式床暖房と電気式床暖房、それぞれの特徴をご紹介します。
温水式床暖房の特徴
ガス・電気などを燃料とした熱源機(給湯暖房機)で温めた水を、床下に通したチューブから床板のパネルに循環させる方法です。
暖房を立ち上げてから暖まるまでが電気式に比べて速く、部屋全体を均一に暖められるのが特徴です。温度の上昇は40度程度までで、上がり過ぎることはありません。そのため、低温やけどの心配もなく、ひだまりにいるような暖かさをキープします。
リビングのような広い部屋でも複数の部屋でも、温水を作る熱源機が1台あれば全体を均一に暖めることが可能です。他の暖房器具を併用する必要がないので、電気代も節約できます。
ただし、熱源機の定期的な点検や部品の交換といったメンテナンス費用がかかります。また、床下に温水チューブを通す配管施工、熱源機の設置など、工事にやや手間が掛かります。
電気式床暖房の特徴
床に電熱線や炭素繊維などの発熱体を組み込んだパネルを内蔵することで、発熱体からの熱で床を暖めます。割安な深夜電力を利用して蓄熱できるタイプもあります。
暖房を立ち上げてから適温になるまで温水式よりも時間が掛かり、電気線の結合部分で温度ムラが発生してしまう点が、温水式に比べると不便といえます。他の暖房器具を併用して使うことになるので、電気代も掛かります。また、長時間使用していると体が接している面が高温になり、低温やけどをするおそれもありますので注意しましょう。
一方、システムがシンプルで、温水式と違い熱源機の設置がいらないこともあり、工事費用が安く済むのがメリットです。設置した後も、定期的な機器メンテナンスの必要はほとんどありません。
広い範囲に設置したり、複数の部屋に設置する場合は電気容量をアップする必要がありますので、冬場の寒さがつらい水まわりなど、ポイントを絞って暖めるのに向いています。
広い場所や複数の部屋で使用したいのか、範囲を限定して暖めたいのか?
ランニングコストの節約をとるか、工事費用や工事期間を抑えてメンテナンスの手間を省くのか?
設置後の生活イメージを固めて、どちらを選ぶか判断するのが良いでしょう。
床暖房に適したフローリングを選ぶ
床暖房へのリフォームには床の張り替えが付きものです。専用の床板にもさまざまな素材があります。部屋の雰囲気づくりも考えて楽しく選びましょう。
床暖房リフォームを行う際には、既存の床から床暖房専用の素材に張り替える必要があります。
カーペット・塩ビシート・コルク・タイル・畳などが使用可能ですが、よく使用されるのはフローリングです。
一般的な洋室の床に使用されている合板(複合)フローリングは熱に弱く、床暖房の熱でひび割れたり反り返ったりしてしまうため、使用されるのは熱や乾燥に強い床暖房専用タイプです。この床板は熱を効率的に床の表面へ伝え、熱によってホルムアルデヒドなどの化学物質が発生しない加工がされているので安心できます。
無垢フローリング
無垢材は自然の風合いと素材感が、ナチュラル系インテリアを好む人々に人気です。これまでは熱や乾燥の影響を受けやすく、床暖房には向かないとされてきました。しかし最近では膨張や収縮を抑える加工がされた床暖房対応のものが誕生し、床暖房の床にも選びやすくなっています。急激な温度上昇ではなく、ゆっくり暖めるタイプの床暖房に採用されています。
竹フローリング
無垢材に比べ、熱伝導率に優れているのが特徴です。
竹は物差しや水筒に加工されたり、お肉を竹の皮で包んだりといった使い方をされているように、温度や湿度の変化による収縮・膨張が少なく、抗菌作用や殺菌作用のある衛生的な素材でもあります。傷がつきにくく、高い耐久性は、一般住宅のみならず店舗など土足で多人数が歩き回る場所でも広く採用されています。
インテリアとしては竹の風合いが個性的で、お部屋を和の雰囲気にしてくれるでしょう。
挽板フローリング
木を薄くスライスした板ではなく、回転する鋸(のこ)刃で切り出した厚みのある板を、合板と重ねて接着したものです。合板なので木の反り・収縮などの変形が極めて少なく、丈夫でメンテナンスに苦労しません。板が厚いため、見た目は無垢フローリングのように見えます。表面の木材にお好みの種類を選べて、インテリアに合わせられる自由度の高さが魅力です。
床暖房リフォームの設置手順
床暖房リフォームも通常のリフォームと同じく、事前にしっかりと検討することが大切です。床を撤去する本格工事か、既存の床の上への重ね張りかなど、専門家に相談しながら進めましょう。
検討段階
1.床暖房の設置場所と範囲を決める
床暖房をメインの暖房とする場合は部屋面積の70%を床暖房にすることを考えて、範囲を決めます。
2.設置する床暖房の種類を決める
工事費用・ランニングコスト・メンテナンスの手間など、設置範囲以外の点に関する優先順位についても併せて検討しましょう。
3.床下をチェックして、工法を選ぶ
・既存の床の上に設置
既存の床の上に温水マットや熱線シートといった熱源を敷き、仕上げに床材を敷設する方法です。熱源を仕上げ材と一体化したタイプの商品も出ています。
ただし、床の高さが工事前より上がることがあり、この段差を解消するためドア下部を切るといった工事が必要になる場合もあります。
コストは床を剥がす本格工事よりも安くなり、騒音や室内の汚れもほとんどありません。工事期間も短期間で済みます。
・既存の床を撤去して設置
既存の床の上に設置するよりも工事費用が掛かり期間も長くなりますが、床の高さが従来と変わらないよう調整して工事をするため、美しい仕上がりになります。
床下の断熱材を新しく敷設することになるため、最新の省エネ技術、製品を反映することが可能です。
どちらの工法にするかは、床下の状態、床の劣化具合なども考慮して決める必要があります。
4.床材を決める
インテリアとの相性、部屋の使い方を考えて選びましょう。
5.リモコンなどの設置場所の確認
リモコンや室外機の設置場所についても、リフォーム会社にチェックしてもらいましょう。
「1.床暖房の設置場所と範囲を決める」の段階まで進んだら、あとはリフォーム会社に相談しながら進めましょう。特に「3.床下をチェックして、工法を選ぶ」の段階は、専門家でなければ判断ができない部分です。
工事段階
温水式床暖房
1.床を剥がす
2.床下に床暖房パネルを設置
3.床暖房パネルと温水配管をつなぐ
4.床材の敷設
5.室外機と温水配管の接続
6.リモコンの設置
7.試運転
電気式床暖房
1.床を剥がす
2.床下に電熱パネルを敷設
3.床材の敷設
4.配線・コントローラーなどの設置
5.試運転
温水式と電気式のシステムの違い、工期の差がわかりやすくなったのではないでしょうか?
既存の床の上に敷設するか、既存の床を撤去するかによっても工事の手間が変わります。
既存の床の上に設置するシートタイプの床暖房では、商品によっては工期が1日で終わる場合もあります。
無駄なく床暖房を設置するコツ
せっかく床暖房リフォームを行うのであれば、無駄なく設置してその暖かさを最大限体感したいもの。上手に配置すれば省コスト・省エネにもつながります。
設置工事の費用は、工法と設置範囲に左右されます。
床暖房はその部屋の床全面に設置しなくてもOK。床面積の70%に配置すれば、十分な暖房効果があるとされています。
戸建住宅の場合は60%以上は敷設しましょう。マンションの場合は50%以上が目安。上手に配置すれば、約50%でも快適に過ごすことが可能です。
次に上手な床暖房の配置の仕方についてお伝えします。
例えばリビングに設置したいと考えたとき、ソファやテーブル、テレビ台などが置かれている部分を床暖房にする意味はありません。
ソファや椅子に座ったときに足が触れる場所、人が移動する動線部分の床、くつろぐスペースの床面を中心に床暖房を設置すれば、効率的に暖を取ることができます。もちろん、床暖房の範囲が狭くなる分、設置費用とランニングコストを抑えることにつながります。
広い部屋に設置する場合で設置範囲をなるべく少なめにしたいときに適しているのは、温水式床暖房です。
パネルを通る温水と赤外線の熱の両方の力で部屋の空気が暖められるため、限られたスペースへの設置でも、部屋全体を均一に暖めることができます。
床暖房のリフォーム費用
車椅子での使用やこだわりの和室など、床暖房が求められる状況はさまざま。工事ケース別の床暖房リフォーム費用をご紹介します。ただし、床の状態など条件によって金額は変わりますので、あくまでも参考例としてご覧ください。
電気式床暖房の工事費用
【例1】
既存の床の上に厚さ0.5ミリの床暖房シートを敷設。工事前の床材は合板フローリングだったが、無垢にこだわりアッシュの無垢材を使用。
住居タイプ/戸建
設置場所・広さ/リビング(20平方メートル)
価格/120万円
【例2】
パネルを床に敷き詰める工法で、ガレージを洋室に変更。工期は3日。遠赤外線効果で、部屋全体が暖かく、他の暖房器具も不要。
住居タイプ/戸建
設置場所・広さ/ガレージ(10平方メートル)
価格/60万円
【例3】
和室の既存の床を撤去して設置。この一部屋だけの設置だったため、熱源機を導入するのは効率が悪いと考え、電気式を採用した。床はフローリングにして洋室に変更、床材には床暖房に適した固い栗の無垢材を使用。
住居タイプ/戸建
設置場所・広さ/和室(8畳)
価格/110万円
温水式床暖房の工事費用
【例1】
既存の床の上に仕上げ材一体型の床暖房を設置。同時にキッチンや廊下につながるドアや間仕切りの段差を解消する工事も行った。
住居タイプ/戸建
設置場所・広さ/リビング&ダイニングキッチン(29.80平方メートル)
価格/130万円
【例2】
高齢者と同居のためヒートショック予防を考え、リビングと水まわりに床暖房を設置し、生活スペースの温熱環境を均一に。リビングはカーペットから車椅子での使用にも耐えられる硬質耐水フローリング仕様へ。
住居タイプ/戸建
設置場所・広さ/リビング&水まわり(22.50平方メートル)
価格/130万円
【例3】
和室全体のリフォームと併せて、床暖房の工事を実施。既存の畳を撤去して温水マットを設置、上から仕上げ材として畳を敷設し、和室のままの使用を実現した。
住居タイプ/マンション
設置場所・広さ/和室(指定なし)
価格/126万円
傷のつきにくいもの、汚れのつきにくいもの、デザイン性など、床の仕上げ材のタイプの違いでコストも変わります。
床暖房の使用環境を考慮して、最適な床材を選ぶようにしましょう。